ミクロチューブを使用したセミ・フリーフック・システム
チューブフライにフックをセットする方法は数多くあります。チューブフライの歴史の長いサーモンフィッシングの世界では、実際に様々な方法が平行して行われていますが、どの方法を採用するかはそのアングラーの経験によって異なるようです。
フックをセットする方法に違いがあるのは、その目的によります。目的がだくさんあると言うのも変な話ですが、それを採用しているアングラーにとって何が最も重要かによって決まります。
方法にはそれぞれ一長一短がありますから、どの方法が良いかと議論を始めると何時まで経っても結論はでません。
さて重要な目的の一つであるフッキング性能を考えた場合、フリーフック・システムが抜群の性能を発揮することに、もはや疑いの余地はありません。通常の使用条件では、フライは水の抵抗によってフックに押しつけられているため、フライを捕らえることはフックを捕らえることと同じです。
しかし魚がフライを捕らえたとき、万一フックがフライと離れていたらどうなるか・・。
魚はフックの付いていないフライを捕らえたことになりますから、正常にフッキングしません。フッキングしてもフックの刺さり方や刺さった場所に問題があるため、強い力が加わった時にフックは外れます。
下流に投げているにも拘わらず、フライとフックが離れると言う通常の使用条件では起こらないことが、2010年のガウラで多発しました。前年秋の洪水の結果、下流部に不思議な流れのポイントが幾つも誕生しました。一つのプールの中に急激な反転流、渦、下降流、上昇流などが入り乱れ、フライは勿論のこと、ラインやリーダーまでが予期せぬ動きをしたのです。
フッキングによる事故は全てそのような場所で発生しました。原因が判ったからと言って、魚が居る限りそのような場所を避けて通ることは出来ません。そのため、また一つ新しい方法を模索することにしました。
それがセミ・フリーフック・システムです。
この方法の解説を始める前に、何故それが必要なのか、またどんな時に有効なのかを少しばかり説明したいと思います。
先ずシリコンチューブを使用したこれまでのフリーフック・システムをもう一度検証します。(
参照:フリーフック・メソッド)
次にミニ・プラスティック・チューブを使用したフリーフック・システムを検証します。(
参照:ミニ・プラスティック・チューブを使ったフリーフック)
今回のセミ・フリーフック・システムはこれまでのミニ・プラスティック・チューブを使用したシステムと基本的に同じアイデアなのですが、これまでは短いプラスティック・チューブをフックに被せたため、結果的にフリーと云うべきものでした。
ロングプラスティックチューブ Micro
それをフリーから少しだけ固定に近づけるため、フックに被せるのはマグナム・シリコンチューブとし、その中に入る部分にはミニの代わりに新しい
ミクロ・プラスティック・チューブを採用しました。
セミ・フリーフック・システムの特徴
1)マグナム・シリコンチューブの中にミクロ・プラスティック・チューブが入るため、摩擦抵抗が大きくなり水中で抜けにくくなります。しかしミクロ・プラスティック・チューブが入るのは僅かに2ミリ程度ですから、フッキングすると直ぐに抜けてしまいます。
フリーになりやすいと言うことからセミ・フリーフック・システムと呼ぶことにしました。
2)フレックス・シリコンチューブを使用する一般的な方法と異なり、フライのボディ後端にシリコンチューブを被せる必要がありません。完成したフライのヘッド側からミクロ・プラスティック・チューブを挿入することができるため、既存のフライをこのシステムに変更するのが容易です。
ミクロ・プラスティック・チューブはスモール・プラスティック・チューブの中にぴったり入ります。固定するには接着剤を一滴垂らします。スタンダード・プラスティック・チューブの中に入れる時は、スレッドを少し巻いて抜けにくくします。
3)フックに被せるマグナム・シリコンチューブと、ボディ後端から突き出たミクロ・プラスティック・チューブの長さを1~2ミリ程度変化させることによって、抜け具合を調整することができます。
4)ミクロ・プラスティック・チューブに直接フライを巻いた場合、フックにミニ・シリコンチューブを被せると、同じようにセミ・フリーフック・システムとなります。
作業の手順
1)ボディとなるプラスティック・チューブの先端をライターの火であぶり、直ぐにガラスなどに押しつけてバリを作る。こうするとフライを巻くときにスレッドがずり落ちません。写真はスモール・プラスティック・チューブ。
2)インナーとなるミクロ・プラスティック・チューブの端も同様に加工する。フライを巻いた後、ミクロ・プラスティック・チューブをボディとなるチューブに頭から差し込み、接着剤を一滴垂らして固定する。
3)ボディ後端から2ミリほど出たところでミクロ・プラスティック・チューブをカットする。
4)フックをセットするにはリーダーを先ずボディ、次にカットしたマグナム・シリコンチューブに通し、次いでフックを結ぶ。フックは
ST4の#5を使用。
5)糸の結び目から2ミリ程度の余裕を持たせ、マグナム・シリコンチューブをフックに被せる。
6)フライを持ってリーダーを引くとシリコンチューブがミクロ・プラスティック・チューブに被さってセット完了。
7)ミクロ・プラスティック・チューブに直接フライを巻く場合は、フックにミニ・シリコンチューブを同様に被せる。フックは
XD1の#10を使用。