'05 2005年九頭竜解禁 サクラマス 61cm, 2.6kg!
内田 尚典 (うちだひさのり) 兵庫県在住 Hisanori Uchida in Hyogo 【Japan】
フライフィッシング歴14年 / サクラマス歴12年
アタリがあってからフッキングまで数十秒。シーズン初物は根くらべの末に、我が手に。
MY TROPHY | MY RECORD |
魚種 Species |
サクラマス Cherry Salmon |
体長 Length |
61cm |
体重 Weight |
2.6kg |
フライ Fly & Hook Size |
ナイトシェード on 1-1/2” プラスティックチューブ + ST1 Treble Perfect #6
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ロッド Rod |
KS SS 1712D |
リール Reel |
KS SU Salmon II Green |
釣った日 Date of Catch |
2005/02/07 |
釣った場所 Place of Catch |
九頭竜川 |
IMPRESSIONS
約10年前の6月。雨が降りしきる魚野川中流を釣っていた。流心に近い右岸を釣り下る。ある一投、シューティングヘッドが流心を横切り、リトリーブを半分ぐらいまでしたとき、クン、クンと小さな感触があった。?。軽くあおってみた。グン、グンとやや強くなった。フラットビームをそのまま手繰りこむと、いいなりに遡ってきた。
「魚だが、小さい。ウグイかな」。とりあえず2回、大きくあわせてから、手元のフラットビームをリールに巻き込んだ。魚はどんどん遡ってくる。ヘッドとのつなぎ目がリールに入った。もう魚が見えそうという瞬間、14フィート半10番の「グリルス」に強烈な重さが伝わった。リールが逆転を始めた。魚は流心をまたぎ、対岸下流にどんどん下っていく。スピードはないが、止められるような引きではない。引き出された100メートルに近づいたとき、不安になった。「下流の瀬に入られるのではないか」。
スプールを抑えた。竿がグリップから湾曲した。魚が水面に出て、首を一回振った。2/0シングルフックに巻いた「グリーンアクアマリン」が魚の口から外れた。反動で後ろに尻もちをつくほどだった。そのままへたりこんで、何度も「クソったれ」と叫んだ。
2000年4月初旬、九頭竜川で初めてサクラマスが釣れた。その月の中旬、同じ流れ。2週間前に釣れたウォディントン35ミリの自作パターンをちょっと豪華にしたフライを、雪代で増水した広大な流れに泳がせた。ある一投、スイングしたラインが下流に伸びかけるころに、リトリーブを始めようとフラットビームに手を掛けたとき、フライが止まった。ラインも釣れたのと同じタイプ3。「川底の石か」と「1612D」をあおったら、ドンドンドンと強い衝撃が伝わってきた。すぐに外れた。
翌2001年2月初旬、雪景色の九頭竜川。雪代前の低水位だったが、流心は勢いよく、そこそこの深さがあるため、タイプ3ラインとウォディントン45ミリのフライを選んだ。プールの真ん中あたり。立ちこんだあたりの流れはきわめてゆるく、回収中のフライが、たびたび底に触れた。ある一投、半分以上フラットビームを手繰りこんだころ、フライが止まった。また中途半端にあおってしまった。ドンドンドン・・・。
その年の4月下旬、神通川。増水した超一級ポイントは同時に、深い流心までフルキャストを要求される一方で手前の流れはゆるく、難しさでも一級だった。底石も九頭竜川より断然大きく、すべる。その日は向かい風がきつく、キャスティングに四苦八苦しながら釣り下った。広大なプールの中ほど、流心がほどけるあたり。タイプ2のラインが底石の間にかみ込まれないよう、竿先を上げてリトリーブ中、モワッ、グイグイという感触があった。あわせをくれると、2インチアルミチューブの「ブルーアクアマリン」は何事もなかったかのように手元に戻ってきた。
2004年4月中旬、九頭竜川。超有名な巨大ポイントを頭から開きまで延々釣り下る。開きに近いあたりで、また、ライン回収中にフライが止まった。「竿をあおってはいけない。絶対に」。ゆっくり竿先を持ち上げて聞いてみる。動いた。魚だ。遡ってくる。そのままリトリーブする。どんどん距離が縮まる。かつて、止水の管理釣り場で繰り返し練習した、ぎゅーっとバットに乗せるあわせを試みた。2番のシングルフックに巻いた必殺ストリーマーは何の抵抗もなく魚の口から抜けてきた。後続の釣り人がいなくなった後、開きだけ、未練たらしくもう2流ししたが、まったく静かだった。
解禁直後の九頭竜川は一面の銀世界。
「Tube and Waddington Fly Dressing」の指定通りに巻いた「オレンジフレーム」と「ナイトシェード」
そして今年、九頭竜川が解禁した。6、7日の日程で初釣行。一面の銀世界だったが、2日目は幸運にも雲間から陽光が差す穏やかな天候となった。初夏のローウォーターを思わせる低水位で澄んでいたが、水温が5度未満の点が大きく違った。
ボックスに眠っていた1インチ半プラスチックチューブの「オレンジフレーム」を選んだ。初めて使うフライだ。2001年2月にドンドンドンをやったポイント。やはり、足元の流れはきわめてゆるい。昼前、ツバメが水面近くを飛んだ。足元にユスリカ類の抜け殻が漂った。立ち込みはひざぐらいにとどめ、静かに釣り下る。プールの真ん中あたり。
フラットビームの回収が終わりかけたころ、あの魚信がきた。何もしない。首を振るのが分かるが、本気では振っていない。リトリーブ。遡ってくる。ヘッドの後端が手元にきた。我慢しきれず、スーと竿で引っ張ってしまった。深いため息だけが残った。
川原でしばらく雪景色を眺めて休憩。気を取り直して再び頭から下る。フライは1インチ半プラスチックチューブの「ナイトシェード」に変えた。この状況で試みた釣り方は間違っていないはずだが、手前に来てからのアタリはもう勘弁願いたい。沢田さんは、できるだけ沖で喰わせる方法について、著書などで「リーダーを伸び切らせ、着水後すぐに生き生きとフライを泳がせる」ことと「流れに対し、直角に近いイメージでゆっくりフライを横切らせる」ことの重要性を説いておられた。
とりわけ慎重にやったにもかかわらず、先ほどと同じプールの中ほどでまた、かなりリトリーブしてから来てしまった。
しかし、先ほどよりは出ているラインが長く、わずかだがたわんでいた。フライは自分の真下に入り切っていなかった。竿の弾力を生かす角度と、魚が首を振った分だけ指先からフラットビームがすべり出ていくテンションを保ちながら、急いでリールを巻いた。これまでで一番長く魚とつながっている。数十秒。魚が目と鼻の先で暴れ出した。竿の弾力とゆるいリールのドラグで耐える。低水温で体力がないのか、流心まで走らない。2、3分で取り込むことができた。フックは口先近くに刺さっていた。苦労に比べ、あまりにあっけないファイトだった。
今までの決して小さくはない魚はサクラか、ニゴイか、はたまた大型ニジマスか。姿を見ていない以上断言できないが、目の前で呼吸しているのは、まぎれもなく飛び切り美しいサクラマスだ。雪山をバックに魚を抱いた写真を撮っていだだき、雪原を延々歩いてくたくたになっていた私の竿を快く車まで運んでくださったM氏に心から感謝いたします。
「微妙なアタリには微妙なテンションを保ち、魚が自分から動き出すまでいくらでも待つ。外れることもあるが、何かするよりはよっぽどまし。」(沢田さんの格言)