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'03  興奮覚めやらず サクラマス 57cm!
篠原 文浩 (しのはらふみひろ) 滋賀県在住  Fumihiro Shinohara in Shiga 【Japan】
フライフィッシング歴9年 / サクラマス歴4年
Fumihiro Shinohara Cherry Salmon
MY TROPHY | MY RECORD
魚種 Species サクラマス Cherry Salmon
体長 Length 57cm
体重 Weight 計測せず
フライ Fly & Hook Size ブラックフェアリー・バリエーション on アルミチューブ1.75インチ+ST1トレブルパーフェクト#4
ロッド Rod KS SS 1712D
釣った日 Date of Catch 2003/05/04 11:00am 頃
釣った場所 Place of Catch 北陸の大河
IMPRESSIONS


サクラマスの釣りをはっきりと意識したのは、娘が生まれた6年前。妻と二人で良く出かけた大戸川の橋のたもとに、根本が朽ち果てようとしているにも関わらず美しい花を咲かせている桜の木の生命力に思いを託して、娘に「桜」と名付けた時に、この釣りをいつかすることになるだろうと思っていた。

4年前の5月中旬。シングルハンドにウェットフライを持って、北陸の川に出かけた。しかしそこには自分のキャスティング技術ではとても太刀打ちできそうにない流れが広がっていた。「やっぱりダブルかぁ」。キャスティングの技術を磨こうと参加しているトーナメントでも思うような成績が出せず、何とかして1712Dを手に入れることばかりを考え始めていた。

シーズンオフに、どうにかこうにか1712Dを手にし、いつもの川に通う。その年は5回の釣行で4回も、目の前でサクラマスが釣れるところに出くわしてしまった。「釣れる人には釣れるんだなぁ」という思いと、釣っている人からは何でもいいから吸収しようと思うようになった。

賭け


今年はある意味賭けるような思いがあった。「今年釣れないようなら一生釣れない」と心に言い聞かせ、2月から時間さえできれば北陸の川に通った。今度の川への釣行は今回が3回目。長く続いた増水がようやく収まりかけた川原に着いたのは午後遅く。先行の地元の方が「今日は絶対釣れるよ」と力強く話してくださるのを頼りに、気合いを入れての一流しが諦めにかわろうというころに「ドスン」。「来た!」「ゴンゴン」「よっしゃ!」「・・・・・・・・・・!?」。
マイ・ファーストサクラマス。

僕の後から釣り下ってくる地元の方に伝えると、「絶対釣れるよ!もう一流し!がんばって!」と励ましてくれた。

二流し目に入ってすぐ、下流の方を見るとそこにいる人のロッドがガンガン引き込まれている。2年ぶりに見たサクラマスは大きくまばゆい銀色に輝いていた。

翌朝、友人と3人で同じポイントへ。ジャンケンで順番を決め一流し目。僕は真ん中。核心部を通り過ぎて、昨日アタリがあった場所まであと少しと言うところで「来た!」という声に振り向くと、しんがりの友人がファイト中。これまた美しい魚。その日は一日中ロッドを振り続けたが、何の変化もなかった。

翌朝は前日の疲れで寝過ごし、ポイントに着いた時には既に大先輩達が釣りをされていた。恐る恐る「入らせてもらっていいですか?」と聞くと、「いいよ。後から入って」と言ってくださった。しかし、前日の疲労で体が言うことを聞かない。しばらく釣り下ったところで「もう限界か・・」と川原に上がり、うずくまるように眠り込んでしまった。

ブラックフェアリー・パールボディ


日も高く昇り、暑さを感じて薄目を開けたところに、大先輩が「寝ていても魚は釣れないよ。川に入りなさい。」と起こしてくださった。今思えば、これが神の声でなくてなんだろうか。少しくたびれたアクロイドを、パールボディーを巻いたブラックフェアリーに替えて釣り下る。いつもの強い向かい風がそよ風のように感じる。リーダーがしっかりターンしてフライを水中に導いてくれている。「気持ちいいなぁ」と思っていた。ふと顔を上げると、例のポイントにさしかかっていた。流心に吸い込まれるフライ。軽いテンションを感じながらフライが流心をはずれようとするところで「そろそろリトリーブを…」と思った瞬間、「ドスン」「エッ」「ゴンゴン」。首を振っている。ゆっくり竿を立てて「来た!」と叫んだ。

川原で休憩されていた大先輩達が、駆け寄ってくださる。川原に上がりながらリールを巻く。意外に簡単に巻ける。「うぐいかな?」ふと頭に浮かぶのはそんなことばかり。でも魚は流心の底を少しずつ上流へと寄ってくる。ちょうど目の前あたりまできたところで、サイドから強めにプレッシャーをかけると、なんと銀色の魚体が浮かび上がってくる。「サクラや!」。そこからも大先輩の指示に従い、魚をゆっくり引き寄せて岸にづり上げるようにしてランディング。しばらくは信じられなかったが、今足元には紛れもなくフレッシュな彼女が、なぜかにじんだ風景のように横たわっている。周囲の誰もがまるで自分のことのように喜んでくれている。何もかもが嬉しい時間だった。
北陸の大河で喜びに浸る。

歓喜


サクラマスに思いを寄せて6年が過ぎた。サクラマスに挑み始めて4年目を迎えた。惜しみなく技術を教えてくださった先輩。現場でお世話になった地元の友人。眠れぬ夜を共にした友人。遠く関東から来ている友人。そしてフライの世界の大先輩のあの一言。多くの方に支えられてのサクラマスとの邂逅。えもいわれぬ幸せをかみしめる。共に釣れない釣行を重ねた先輩が同じ日にサクラマスを手にされたと聞いたときは、正直鳥肌が立った。

長きにわたって釣れない理由を問いただす僕に、ねばり強くアドバイスを与え続けてくれたショップのオーナー・店長への感謝は、語り尽くせない。「1匹釣ったら、釣り逃げしよう」と心の隅に常にあった思いは消え去り、僕はもうこの釣りをやめられそうにない。