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'04  トロフィー更新 サクラマス 63cm!
猫田 寅吉 (ねこたとらきち) 山形県在住  Torakichi Nekota in Yamagata 【Japan】
フライフィッシング歴26年 / サクラマス歴16年 / リリカルアングラーズメンバー
Torakichi Nekota Cherry Salmon
アクロイドをくわえたサクラマス63cm。自己記録を更新。
MY TROPHY | MY RECORD
魚種 Species サクラマス Cherry Salmon
体長 Length 63cm
体重 Weight 計測せず
フライ Fly & Hook Size リードフライ:グレイイーグル (1/4インチゴールドチューブ+1-1/2インチプラスチックのハイブリットチューブ)に#4トレブルフックをフリーフックシステムで
ドロッパー:アクロイド、2/0シングルローウオーター
ヒットしたのはドロッパー
ロッド Rod KS SS 1712D Limited HARD ACTION
リール Reel KS SU SALMON I THE 30TH ANNIVERSARY
釣った日 Date of Catch 2004/04/24
釣った場所 Place of Catch THE RIVER OGUNI
IMPRESSIONS

ひらめき

そして、ずっと、週末ごとのチェリーサーモン釣り、さすらいは続いていた。

前の週末、いい形のやつを釣り損ねた。下流に突っ走った魚は遠くの水面でジャンプ。そして二度目の水面でののたうち。フライとともに手ごたえがなくなった出来事。根ズレで傷んだティペットを引きちぎっていかれた。悔しさと未熟な自分に対する口惜しさを一週間ひきずった。

大本流、春の大河の流れは膨張し、秋や冬の時節のように水が澄むことはなくなった。水田の農作業の季節が終わり、梅雨が終わるまでこれから一段と濁りは続くのだ。この春、久しぶりに雨が降り、大河は濁りを増しふくらんだ。

釣り場に来て流れを見て、ふと思った。チェリーサーモンはここを通って遡っていく。もしかしたら、早く上った群れは、もうすでに上流の大きな支流に入っているかもしれない。そろそろ支流をやってみてもいいのかも知れない。

なんとなくそんな思いに誘われ釣り場を支流に移動した。

アクロイド


その日のその支流は、予想外に水が澄んでいた。寒さのために山の雪解けが進まないのか、水位もそれほど多いとはいえなかった。狙う場所は淀みのある大きな淵。そう決めてひとつの淵を選んだ。

予想以上に水が澄んでいたので、濁った大河で使っていたリードフライ、イエローイーグルをグレイイーグルに変えた。そしてなんとなくグレイイーグルでも心もとないなという気がして、澄んだ水の、スコットランドのディー川で生まれたという黒のヘロンハックルのフライ、アクロイドをドロッパーに結んだ。

「澄んだ水でサーモンを誘う」何時だったか、このフライの、そんなパターン紹介を見たことを思い出してフライボックスから取り出したのだった。

ラインはタイプIII。ここに魚が来て、そして居るとすれば淵のど真ん中の底。何か障害物が沈んでいればその前に付いているんじゃないか。流れは対岸の岩盤にぶつかっているから対岸の水流は荒れているはずなんじゃないか、サーモンは緩い流れの、流心手前の巻き返しの底で休んでいるんじゃないか。そう思った。この淵でタイプIIIではちょっと沈みすぎて根掛りが多いかもしれないが、魚がいたなら根掛かる前にフライに食いつくんじゃないか。・・・そう思い切ることにした。

ストライク


冬の寒気が逆流した春の天気はめまぐるしい。雲の流れも速く日差しと風雨が交互にやってくる。ポイントに立つと風は強いアゲンスト。風雨、そして不意に霰が襲ってきた。

けれども何かに突き動かされのか、そんなことにはかまわずロッドを振りはじめた。SS1712Dリミテッドハードアクション。過酷な自然条件に立ち向かうために設計されたといわれるロッド。強い向かい風に立ち向かうためにそのロッドを求めた。自分の使っているタックルに不安はない。万全だ。

何投かした。来るとすればこの辺だ。スイングしているフライが何時底を擦り、引っ掛かるのか、そう思ったとき、鈍いストライク。

何か来た。とりあえずは慎重にゆっくりロッドを絞り、フックアップした。始め、魚はあまり動こうとしなかった。カワザイ(私の地方でニゴイのこと)か?

しかし、引きは次第に強くなっていった。ロッドがぎゅーっとしぼられてきて、リールからラインが引き出され始め、こんなにすごい引きは外道ではないと思うようになった。強い流れをロッドを絞りながら少しずつ自分の前方に来た魚が不意に水面に浮上、鉛色のしっぽが水面を叩いた。

「魚はぎんいろだ!」

そのとき初めて自分はチェリーサーモンと対峙していることを認識した。私が慎重になったと同時に向こうは力を出し始めた。しかし、冷たい強い流れは私に有利だったのか、重く長い戦いに勝ったのは私だった。

おおきい。

歓喜。

---つづく---