お気に入りのプール、ラングワにて。
釣りを始めた小学生の頃から、子供心にいつかはサーモンフィッシングに挑戦したいと思ったものでした。
東北でもサーモンの調査捕獲が開催されるようになり、私はあらゆる河川の調査捕獲に応募し、サーモンフィッシングの醍醐味にすっかり魅せられました。いつの頃からか沢田さんのWEBサイトを拝見させて頂くようになると、文中に登場するアトランティックサーモン・フィッシングにいよいよ魅せられていきました。
それからと言うもの、マインドアングラーの古本を入手しては何度も繰り返し読み、仕事の休憩時間にはWEBサイトで「That’s Salmon Fishng」や「MARYANNE’S FISHING REPORT」を読み耽るという毎日(笑)。私もいつかはガウラでのアトランティックサーモンFFに挑戦したい。そんな気持ちは日増しに強くなっていきました。
昨年 沢田さんが、とあるFF誌に出ていると友人から教えてもらい、早速購入して読んでみました。そこに書かれていた内容は私のガウラ行の決断をさせるには十二分な説得力がありました。
レナプールのシェルター。
それまではヤマメでもイワナでも何でも釣れれば良いと思っていましたが、自分自身の基礎釣力を高めたい一心で、本流ヤマメに挑戦することにし、そして以前から憧れていた美しいウエットフライを自分自身の手でドレッシングして釣る!と心に決め、沢田さんの門戸を叩くことにしました。
お店に何度も伺い、様々なヒントを与えて頂き、本流ヤマメ挑戦1年目に38センチの美しい魚を釣ることが出来ました。本流ヤマメを狙っておられる方なら同じ気持ちだと思いますが、あの魚は足繁く川に行き、様子様相を判断しなければとても釣れるものではありません。この本流ヤマメFFの入り口を垣間見たとき、ガウラのアトランティック・サーモンフィッシングも同じだと思いました。川に慣れ親しんでこそ釣れる魚であろうと。だから釣れても釣れなくても、まずは一度でも行かなければ何も始まらないと思い さらに決意を固めました。
今年の1月、沢田さんにガウラのブッキング方法について尋ねてみました。まずはビートの空き状況を確認する事から始めなければならないと知り、早速予約確認をして頂くことにしました。数日後に予約が取れるというお電話を頂いてからは怒涛のような日々が始まりました。
ギリーのマーカス。
長い間、喉から手が出るほど欲しかったSW1712Hを購入し、チューブフライやダブルフックのフライを数十本単位でドレッシングする日々。キャスティングスクールにも参加させて頂き、講師であり、しかもガウラでの経験も豊富な平野さんから実戦的キャスティングも伝授して頂くことが出来ました。(とは言っても、まだまだ活かしきれていないのでスクールにまた参加します!)
そんなこんなで、あっという間に月日は流れ、7月に入ってからはお店にも数度お伺いして沢田さんからは最終アドバイスと勇気を頂きました。
前置きが長くなってしまいましたが、7月15日の日曜日 私はついにリバーガウラの河原に立ったのです。FFを始めたときは3番ロッド一本、渓流で遊ぶだけのつもりだった自分を、大きくて美しい魚を釣りたいがため13年後にはノルウェーまで来させてしまうFFとサーモンフィッシングの魅力って凄いなと・・・。
前の週には平野さんと道下さんのチーム・ニッポンがいらっしゃるという事なので、ビートごとの駐車場や入渓方法を確認しつつ、小雨のなか、グリーンジャケットの姿を探しました。ビート・ラングワで道下さんご夫妻に初めてお会いすることが出来、なおかつ状況説明やアドバイスまでしっかりと頂きました。午後はホームプールでキャスティング練習をし、19時過ぎからのNFCのミーティングを受け、ギリーのマーカスとも面会し、早速20時からのローテーションを釣ることに。
レナから見る遅い夕日。
出かける間際には平野さんにも再会でき、道下ご夫妻ともども、またまたアドバイスを頂き、感謝感激のスタートとなりました。(さらに夕飯の差し入れまでありがとうございました。)
さて釣りの方は・・・というと、NFCの発表ではここ数年でワースト1のタフな週という事。それ以前に、私はこの魚を良く知らないですし、この川をも良く知らないのです。とにかく週の前半はギリーの言う通りに試してみましたが、ビートE2でのシートラウト1本(とは言え、リールが逆転した時は鼓動が早まるのを押さえられませんでしたが・・・)。水曜からは少しずつギリーのアドバイスと違う事も相談しながら試すことに。
とにかく釣れないなら釣れないでやってないことを全て試すしかありません。その間にもロワーガウラは大量の砂でグレーに濁って釣りにならない状況です。どうしていいか自分を見失いそうになりかけたとき、日本にいる沢田さんに電話で励ましていただき、根気強く投げる気力が湧いて来ました。木曜日くらいになると川全体の様相も落ち着く気配が出てきました。せめて土曜から雰囲気が良くなってくれれば、2日間釣りに集中できるので、ただただそう願うばかりでした。
週の前半は冷たい雨が川を覆った。
迎えた土曜日は、毎日そうしてきたように朝食後にすぐ出かけ、この日も根気強く投げ続けました。この一週間、なぜか「次の一投は釣れるぞ!」というモチベーションを保ったまま投げ続けることが出来ました(それもこれもガウラの流れはそれほどに魅力的だという事なのですがね。)あっという間に一日も過ぎ、夕食後ギリーと別れ、次のローテーションのレナへ向かいました。
ここでやりたいことはインターミディエイトで投げ続ける事と、「今は7月だけど今年はとても寒いので6月の釣りをするのが良いと思う。」とのギリーの言葉を思い出し、ミッドウォーターで大きめのフライは良いかも知れないと思い、2インチのチューブに巻いたローズマリーを使うことでした。
前回レナのローテーションでは送電線の真下ぐらいまでしかフライを流しておりませんでしたので、レナの流れ出しの手前の開きまで丁寧に投げてみました。と、リールが逆転。余裕をもってフッキングし、グリルスですが、やっと最初のサーモンをキャッチ。オーストラリアから来たパートナーのハリーからもガッツポーズで称賛されました。
その後も粘り続け、最終日0時からのブリッジプールも粘り、4時から8時までは休憩し、最後のローテーションはラングワ。ここは自分でも気に入っているポイントです。本当に今週のタフな状況がウソのようにグリルスが跳ね、魚っ気があります。そんな時にラングワの下流でサーモンがジャンプ。きっと遡ってくるだろうと、気持ちも高らかにステップダウンして行きますが、カスりもしません。もうあのサーモンは行ってしまったのか・・・時刻も9時30分をまわっています。
諦めかけたころ、先ほどサーモンがジャンプしたあたりにフライが差し掛かった時、リールが逆転しランニングラインが走り出しました。「こいつまだ居たのか!」どんどんラインが出ていきます。一度止まりかけましたがまだまだ走ります。じっくりと走らせてから余裕をもってフッキング。どう見積もっても昨夜のグリルスの5倍くらいのパワーで走ります。一向に寄る気配がありません。
最終日まで諦めず頑張って投げた甲斐がありました。ラインはまだまだ巻き取る量よりも出ていく量の方が多く、十分にファイトを堪能できそうだと思った、まさにその時。ロッドから躍動感が消えました。
その後も12時まで粘り強く投げ続けましたが、チャンスは巡っては来ませんでした。
よくよく考えてみれば、まさに先ほどのサーモンはガウラからの使者。「来年もまた来いよ!」の挨拶だったのでしょうか。
ガウラでの1週間は、自分の釣り史の中では最高にタフ(釣り、体力損耗ともに)な経験でした。
毎日、雄大な自然の中でキャスティングできる事に感謝の念でいっぱいでした。もちろん気持ちよく送り出してくれた妻と子供たちにも。仕事じゃなくて釣りに来ているのですから、釣れなくたって辛いなんて思うのは可笑しな話です。本気の遊びだから毎日18~20時間もロッドを振り続けられるわけです。
アトランティックサーモンはノーキャッチでしたが、ガウラからの挨拶を頂いた以上はまた再挑戦したいと思います。これからが自分のガウラ・サーモンフィッシングの本当の始まりなのだと実感しています。
そしてやはり、この釣りにはあのフレーズで。THAT’S SALMON FISHING!