今回の宿。牧歌的でシビれる。
この時は正直、とんでもない事がガウラで起こるのではないかと予感がした。
アムステルダム~トロンハイム便への乗り継ぎができないため、KLMの手配でスキポール空港近くのホテルへ一泊となった。レンタカー会社に飛行機が遅れる件は沢田さんに連絡して頂き、NFCへは自分で連絡。日曜の朝は気持ちよくホテルで目覚め、アムステルダムを後に。
トロンハイムから車で向かったNFCの新しいヘッドオフィス兼クラブハウスは素晴らしいものでした。バーやダイニング、リビングを備え、スタッフが飼っている4匹のワンちゃんもいます。2年目であることと、主だったスタッフたちとは日頃からフェースブックで付き合っている事もあり、みんな暖かく迎えてくれた。
新しいクラブハウスは、常に冷たいビール、温かい飲み物もあれば、ランチもディナーもOK。スタッフとフリスビーをしたり、ワンちゃんとボールで戯れたりと、釣れない釣りで疲れた精神を癒し、リラックスも与えてくれる楽しい施設となっていた。
1インチと2インチのローズマリー。
まず今回のファーストフィッシュはビートBS1でのブラウンだった。いつもなら貸切になって、ローテーションに入っていないビートのため、期待はしていたが、大変なローウォーターでスイングが遅すぎる。加えて、数が少ないと言われた去年よりも、サーモンは更に少ないというコンディション。おまけに平野氏のコメントにもあるように気温が異常に低く、最低の朝は7℃だった。
しかしながら、最悪のコンディションだろうと、サーモンが少なかろうと、そのような状況判断の以前に、私は2年目。まだまだ知らないことだらけ。コンディションを口にするのもはばかるビギナーなのである。
高度かつ安定的キャスティング技術、サーモンを誘惑するフライ、フッキング、ファイティング、それらが高次元で融合して初めてランディングできるのだ。自分に足りないモノは、その全てであることは自覚出来ている。今回は川での時間を多く過ごすこと、川通し全て釣るくらいの大きな気持ちでいたい。それに昨年は体力温存のためと、自分を甘やかし毎晩ホテルで寝ていたが、今年はMust die覚悟(笑)。河原で寝ることも辞さない気持ちで釣りをし続ける事に。コンディションの心配は二の次なのだ。
日暮れ時は1インチと2インチのスティングレーで。
とは言え、オフ中に手をこまねいていたわけでもない。サワダ主催のキャスティングスクール、フライドレッシングスクールに参加させて頂き、「昨年より」は良くなったキャスティング、フライを携えてのガウラ入りでもあった。
BS1の次のローテーションはC1。ここにはローウォーターになったら入ってみたいと、実にこの一年決めていたポイントがある。沢田さんからは今年の7月は間違いなく酷い渇水に見舞われるから小さいフライの準備を怠りないようアドバイスを頂いていたので、そこに入ることを前提に2種のフライを準備しておいた。#6のダブルフックに巻いたグリーンワスプと、1インチチューブに巻いたローズマリー。
ローズマリーは去年までの代用チキンマラブーじゃない。イーグルを使用した本物。ローウォーターでピーカンの午後だから、最初はダブルのグリーンワスプでお目当てのポイントにアプローチ。リールが「ジー、ジー」と2回逆転したが、魚はフライを離してしまった。ブラウンかグリルスだろう。2タームを終え、あまりに眠いので昼寝をしていると平野氏が現れた。先ほどのアタリについて話すと「そのアタリはサーモンだよ。」と仰る。
平野氏がさっそく1ターム目に入ったが、アタリがあった場所は外してくれた。ずっとステップダウンしたところを確認し、私が入る。フライはこのために用意しておいた1インチのローズマリーにチェンジ。ラインは早い流れでもフライを水面直下に送り込めるようにインターミディエイト。
NFCエンリコとワンちゃん。
距離を合わせるための1投目。そして、ドンピシャの2投目。サーモンはアッサリとフライを捉えた。瞬く間に物凄いスピードで走り、リールは高回転な逆転音。
逆転音が大人しくなったところでフッキング。とんでもない重さとパワーだ。去年釣り逃したサーモンの更に5倍くらいのパワー。というか、ロッドが立てられない。
予感は的中?&これがそうなのだろうか?気持ち高ぶり鼓動が早まる。
リールの逆転音から気づいていた平野氏が釣りをやめ、ファイトのヘルプに来てくれた。お蔭でファイトの態勢を整えることが出来たが、それにしても途方もないパワーの魚。平野氏からは、「これはデカいよ!」「15kg、いや20kgとも思わせる魚だから、絶対に一緒に獲ろうよ!」「絶対に獲れると信じるんだよ!」と何度も何度も励ましを受ける。浅場にいるのにボトムにへばりつき一切姿すら見せない。
興奮ですでに口の中はカラカラだ。
一旦下った魚だがSW1712のパワーとサーモンⅡのスプールをひたすら手のひらで抑え込むと根負けしたのか、今度はじりじり対岸に走り、その後も急流を上流に走り出し、遂にはフライを捉えた場所に戻ってしまった。その間もひたすらボトムを行く。物凄い重量感です。
何故か釣り場に雑炊が届いた。
振り出しに戻ったところで本格的にファイトをする気持ちも整い、一気に魚にプレッシャーをかけるためロッドを思い切り立てた、その時・・・。
それからの一週間は、初日のサーモンを夢見ながら、もうどうにも眠い体をフラフラと車に押し込んで河原に向い、昼も夜も夜中もフライを投げ続けました。週の後半はロッジには戻らずに河原で寝たり、車で寝たり。水曜日以降、着替え以外はほとんどロッジに戻らない自分を、ロッジの女主人は「You fishing like a mad.」と言う始末。
最終日には平野氏のファイティング&ランディングに立ち会えたので、サーモンとのファイトまでしっかりとこの目に焼き付けることもできました。
昨年は6~8時間の睡眠を確保してましたが、今年は毎日4~6時間程度。良くもまあ1週間、体が動いたものです。最終日も懲りずにフリーを18時まで釣り、実にハードでタフな1週間でした。その甲斐あって、ビギナーながらもトータル6バイト。3ブラウン、1サーモンばらし。2バイトだった去年よりチャンスを作ることができました。
何故か釣り場におにぎりが届いた。
しかしながら、作り出したチャンスを活かしきることが出来ないのは、自分自身のなかでまだ何かが足りなのだろうと思います。自然が相手ですから、やってくるチャンスも活かしきれてないのでしょう。オフの間の、キャスティングスクールでの平野さんのご指導、ドレッシングスクールでの座間さんのご指導、沢田さんからの様々なアドバイスを受けたことが役に立っているのに活かしきれていないのですが、前向きに考えれば、またガウラから宿題を頂いてきたのです。
クタクタになりながらも思い切り楽しむことができました。今年も気持ちよく送り出してくれた妻と子供たちに感謝してます。それからロクに食事もしないで釣りをしていたのを察知して、親切な方が食事を作って届けてくれました。誰かは秘密です(笑)。
一週間が瞬く間に過ぎ去ってみれば、今年の「ガウラの使者」は既に初日に来ていたようです。でもそのせいで、モチベーションを「異常に高く」保ったままの1週間を過ごせたのも事実。そして3年目の挑戦も心に堅く決めたのです。
しかしながら、平野氏の「フィッシングファイヤー」の威力は異常ですね。あれは絶対に媚薬が仕込んであるとしか思えません。
ガウラが釣れる時、決まって水はコニャックカラーですが、私は平野氏のフライは、きっと「ルイ13世」か「ヘンリー4世」あたりに1年間漬け込んであるのではないかと思うのです。今度お会いした時に、そのあたりを一度聴いてみなければなりません。