九頭竜川に通い始めて42日目。天気はくもり、ローウォーター。
昼食のために多くのアングラーが引き上げ、空っぽになった、この川で最も有名なプールに入る。
流れ込みから釣り下って10数投目、DSTラインの強力なターンでフライが対岸の流心に入り、
すぐに絶妙なテンションでスイングが始まる。
メイフライが目の前を風に流されて通り過ぎていく。「あっ、何かありそう」
「コン」、、、瞬間的に持っていたフラットビームを離す。フラットビームがスルスルと出ていき、
一瞬間をおいてサーモンⅡが「ジー、ジー」と鳴り始めた。
思い起こせばフライ・フィッシングを始めて数年経った1999年頃、
「マインド・アングラー」紙に出ていたサクラマスの記事や、そのタックルを見て、
「日本でもこんなフライ・フィッシングをしている人がいるのか」と感心していた。
それにフライ・フィッシング歴何年、サクラマス歴何年という紙面のアングラーを見て、
「サクラマスというのはそんなに特別な対象魚なのか」と感じていた。
でも当時、東京に住む自分には縁遠いものだと思い込んでいて、
将来自分が九頭竜川で、サクラマスを釣ることになるとは夢にも思っていなかった。
しかし凡そ15年後の2015年、あるきっかけで九頭竜川を訪れることになり、
それ以来、週末に夜行バスを利用しての九頭竜通いが始まった。
重い流れに浸かって、風が吹く中で、正確に遠投を繰り返す技術。
刻一刻と変わる風向きや水量に対処して、フライをきちんとスイングさせる技術。
フッキングやその後のファイト。
サクラマスを釣るには、これらの全てを高い次元で実現できることが必要で、どれが欠けてもチャンスはない。
しかし、できたとしても、気まぐれなサクラマスがフライを捉えるとは限らない。
「釣りができれば、釣れる可能性はゼロではないけど、川に立たなければ可能性はゼロ」まるで宝くじ???
釣りに何の意味があるのだろうか」とさえ思うこともあった。
けれどもこの釣りを指導してくれた偉大な人々や、川で知り合った仲間達に励まされ、
この2年間、何とか続けてくることができた。
おかげで九頭竜川に通い始めた当初に比べれば、考え方も技術的にもずいぶん成長したのではと感じている。
昔、「マインド・アングラー」紙で見た憧れのサクラマス。
今、最高の魚を、最高の川の、最高の場所で。
そして最高のタックルで釣れた幸運に感謝!