地球温暖化は止まるところを知らない。このままでは本当にアトランティックサーモンは過去の魚になってしまうのではなかろうか。
そんな不安を抱きながらも、この釣りはまだまだ楽しみたいし、私は6年目に過ぎない。
今年は、自分の経験値を上げるべく、ガウラ以外の川に行ってみることにし、沢田さんと友人の紹介で、2016年秋にコラ半島の河川をブッキングした。スプリングフレッシュと増水を想定し、アグレッシヴかつアトラクターなカラーのフライを準備し、一路ロシアへ向かった。
往きの成田からヘルシンキは、JALとフィンエアーのコードシェア便だが、機材はJALだったので機内サービスは気配りがあった。
ヘルシンキからムルマンスクへの便はフロンティアー(アウトドア系旅行社)のチャーター便だったため、乗客は世界中から集まった釣り人しか乗っていない。ざっと80人くらい乗っているだろうか。このメンバーが全員同じ川に行くわけではなく、ムルマンスクからそれぞれの目的の川に振り分けられ、陸路やヘリで向かうのだ。先行していた友人ともムルマンスクで合流。
そして、土曜の午後、キャンプ地に到着。荷物の整理、遅めのランチ、釣りのルール説明を経て,ついに夕方から2時間の初日の釣りへ。
豊富な水量と変化に富んだ流れは、SW1712に持ってこいだ。流速を予測しタイプ4でスタート。
アグレッシブに食い込まれたフック
速い流れから緩めの流れにフライが入った途端、大きなケルト(年越しサーモン)。ガウラだとここぞ!というところで魚が出ないことだらけだが、すぐに釣れたので驚いた。
同時に、サーモンは間違いなく早い流れと緩い流れの狭間に居るはずだ。そう確信をもちながらのキャストダウン。楽しい!
小一時間投げていると、ここぞ!と言わんばかりの流れまであと数投。ガイドがそろそろタイムアップなのであと2投で終わってくれ、というのでOKを出し、その1投目でサーモンがテイク!。ガイドにそのことを告げ、もう1投。
ここぞというところで食わなかったのですぐさまストリップ、間髪入れずダイナマイトのようなアタリ。フッキングするがロッドが立たない。フライを咥えたと同時に反転しているのだろう。ドスンじゃない、ドカン!。
ガイドと
この魚が何とも酷い暴れ方。力強くとそして勢い良く走り回る、圧倒的なパワー。凄まじい。
やっとのことでランディングに成功した魚は、それでも83cmの17ポンド。信じられない。
このサイズにして、あのパワー。経験してみなければわからない、尋常じゃない持久力。
しかも、日本で巻いていったアトラクターフライにアグレッシブに食いついたのも嬉しい。
沢田さんがスプリング・フレッシュサーモンの釣りに魅せられた理由がわかる気がする。
記念すべきファーストフィッシュ
ガイドが、「最後の2投で本当に釣った。タクにはたった2投だけあれば良い。」と冗談を言う。1週間の釣りを楽しく過ごせそうな気が合いそうな奴だ。
次の日からも朝から晩まで釣るわけでだが、ガイドがランチを背負って同行してくれるお陰で、豊かな景色の中で、温かいスープのあるランチが提供され、気分上々。釣りの方もおびただしい数のケルトに、ここぞというところではスプリングフレッシュも交じり最高に面白い。
大きなケルト
火曜日には夕刻に22ポンド95cm、これの魚はスペックだけでは想像もできない圧倒的パワーで100m近く下った、ガイドも追いかけてはどうか?と言ったが、絶対に動かないで取る練習をしたいと思ったので必死に走りを止め、長い長いファイトの末に最初のポジションのままランディングに成功し、この1匹は自分にとって、ファイト&ランディングの良い経験になった。
連日、ここぞ!という流れで魚を釣ったので、ガウラで完全に失っていた自信を取り戻すことができた。
というよりも、初めてアトランティック・サーモンフィッシングにチャレンジしたガウラでの難しい釣りに遭遇し、自分で勝手に自信と自分を見失ってきたのではないかと思えてきた。
(自信を取り戻すため、キャスティングやドレッシングを見直しては来たが・・・。)
この1週間、ガイドのジェニアは、毎日自分に寄り添いアドバイスを行い、替えのタックルのセッティングもしてくれ、私は次々に魚を釣った。自分の釣りがそれほど間違ってなかったことに気づけただけでも、コラ半島での釣りは良い修行になった。そういう点でも、そして人の手つかずの景色に囲まれて釣りができたことも、とても素晴らしい思い出になった。
来年もここに絶対に来るぞ!と誓うと同時に、もしや、このままコラ半島でのサーモンフィッシングの経験をガウラに応用したら、自分が思い描く結果が得られるのではなかろうか?と思えてきた。
次回7月のガウラ釣行は、いつものような納得できない結果に終わるのか、それとも・・・。
不安と期待を抱えてコラ半島を後にした。
雄大な流れ