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-- FLY FISHER`S GREAT CONTRIBUTIONS

ONON TRAVELER(オノン・トラベラー)

平野 秀輔(Shusuke Hirano)
元全日本キャスティングチャンピオン/プロショップサワダ・スクール専任講師

モンゴルもアングラーが増えて魚がスレたのか・・。以前よりローズマリー・ロングテールにアタックしてくるレノックが明らかに減った。かつてはタイメンを狙って投げたそれに邪魔だと思えるほどレノックが喰いついたものだが・・。

そんな訳で3年ほど前から、全くアタリが無くて少し疲れたとき、レノックに少し慰めてもらおうと結んでいたのが、2インチチューブのグリーンワスプだ。9ft程に詰めたリーダーにグリーンワスプを結んでスイングさせれば直ぐにレノックが相手をしてくれた。いやレノックばかりではなく、良型のアムールトラウトや60㎝までのタイメンもグリーンワスプを飲み込む。
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モンゴル釣行7年でたどり着いたスペシャルフライ。ONON TRAVELER。

オノン川・バルジ川だけでなく、チョロート川でも、エグ川でもお守りとなったフライだ。が、やはり大型のタイメンにはアピール不足の感がある。そこでグリーンワスプを大きく作れないかと考え、チューブを3インチにしたり、ウイングとして20㎝以上のバスタードシープを付けたフライを作ったこともあったが、大した釣果は得られず、何よりフライが生きているようには見えなかった。

そんな悪戦苦闘の様子を見たバルジ川のガイドであるトミンが、「オノンやバルジ用のフライで重要なのは、長さじゃなくて、ボリュームなんじゃないか?」と言ってきた。それを聞いて直ぐに思い出したのが、ガウラのブリッジプールの焚火によく捨ててあるフライ達である。1インチ未満のショートチューブボディに2インチは超えるヘアーウイングをこれでもかという位たっぷり付けたやつだ。あまりにもボリュームがあり過ぎるし、何より美しいサーモンたちには似合わないのでガウラでは使う気がしないが、モンゴルには意外と良いのではないか・・。

よし、来年は試してみようとずっと構想は練っていた。実際にタイイングしたのは出発前日の金曜日。沢田さんに1インチチューブを送ってもらい、グリーンワスプを基本にアンダーウイングにフォックスをテンプルドッグスタイルで付けボリュームを出し、さらに12センチほどのグリーンのバックテールを被せ、ボディと同じくらい大型のジャングルコック纏うという何とも凄まじいフライが完成した。

名付けてOnon Traveler(オノントラベラー)。すなわち自分のことだ。タイイングに没頭し、スーツケースを閉めたら夜が明けた。ここ何年間か、ガウラだろうがオノンだろうが、出かける前日は徹夜だ。どうせ飛行機で爆睡すればいいのだから。

ムービングタイメン


オノンに着いて2日目の朝、そのフライが活躍し始めた。ガイドのアムガーが案内したポイントは初めての場所であり、100m位続くプールはオノンには珍しく、比較的早い流れがトップからエンドまで続き、そこに障害物が多く入っているのか、万遍なく水面に変化が表れていた。
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いきなり釣れたのは76cmのタイメン。アムガーが「タイメンが動き出した」という。

初日にタイプⅠ/Ⅱのラインとローズマリー・ロングテールを使い、中型のタイメンを3本釣っていたので、とりあえず同じシステムでトライする。しかし思った通りフライのスイングが早すぎ、プールエンドまでゆっくり釣り下っても何の反応も無い。しかしこんなに良いポイントにレノックさえも居ないとは考えられない。岸に上がり、ラインをタイプⅣに、フライをオノントラベラーに替えて、トップの流れ込みにキャストすると、すぐさま43㎝のレノックがフライをひったくった。それから5mほど下ったところでも今度は46㎝がフライを飲み込んだ。

やはり魚は居た。さらに下るといよいよタイメンが潜んでいそうな流れになったので、フライをまたローズマリー・ロングテールにチェンジ。じっくり流して釣れたのは、パーマークがうっすら残る50㎝弱のタイメンだった。プールの割にはしょぼい魚しかいないのかと思ったが、それからもしばらく投げ続け、また流れ出しに近づいたので再度オノントラベラーを結んだ。あと三投ほどでこのプールも終わりか思ったとたん、スイング中のフライが重く抑え込まれた。

「え?タイメン?こんな場所で」

76㎝と大した魚ではないが、紛れもなくタイメンがオノントラベラーをガッチリ銜えて岸に上がってきた。よし、このフライは行ける。ただし、タイメンの釣れる場所が違う。気が付くと昨日と朝一番はかなりの冷え込みだったが、明るすぎる完全なモンゴル晴れの下で気温が急上昇している。水は減水気味だから水中への影響は相当なものだろう。アムガーはタイメンが動き始めたという。つまりサーモンならぬタイメンのムービングだ。サーモンのそれはフィッシングチャンスであるが、タイメンには当てはまらない。タイメンはやはりトラウトフィッシングだからムービング中はあまり釣れないのだ。

最高の一流し

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アムールトラウト。パワフルな引きが魅力だ。

その翌日、昼の12時、この時期のモンゴルでは珍しく、気温が23℃もあった。朝から釣れたのは、50cmにも満たないタイメンとレギュラーサイズのレノックだけ。疲れと暑さのあまりにビールを飲んだら、体中に怠さが広がった。おまけに明るすぎるモンゴルの太陽。食事して昼寝でもしようかと思ったが、アムガーと料理番の女の子で特製ランチを作るから、後2時間は食事にありつけないという。仕方なく怠い体にムチ打って、釣りを始めた。

そのプールも初めてのポイントで、昨日のプールとよく似ている。そこで全く同じようにタイプⅣにオノントラベラーを結んで、流れ込みに投げるとすぐさま53㎝のレノックが喰ってきた。マイレコードは55㎝だからいいサイズである。こうなってくるとアドレナリンが出て、釣りに没頭する。しばらくして怪しい流れに差し掛かったので、フライをローズマリー・ロングテールに替え、アクションを付けてスイングさせると強烈なアタリ。SW1713を結構曲げたのは58㎝のアムールトラウトだった。これもマイレコードに2㎝足りないが、やはりアムールはグッドファイターだ。さらに釣り続ける。また開きの近くになり、オノントラベラーに替えると、例の抑え込むような重いアタリ。

タイメンである。
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ガイドのアムガーと。

頭がグリーンで、胴体の半分以上が赤く見えるきれいな魚体である。84㎝と大したサイズではないが、まあまあのサイズ。一流しでグッドサイズのレノックとアムールトラウト、そしてタイメンが釣れてしまった。昼寝をしていたらこうは行かなかっただろうと思うと、やはり可能性がある限りは、体にムチ打って釣りをしていなければならないと思う。ガウラでは自分の根性なしに何回泣かされたことか。しかし、やはりタイメンはムービング中でプールエンドに居た。サイズは大したことなかったが、アムガーは大喜び。自分が探し出した新しいポイントで、魚が居ればやっぱり平野は釣ってくれると。

まだモンゴルは終われない


またもメーターオーバーはお預けとなった今年のオノン・バルジ。ただ、釣れ方が毎年違うのは、ガウラもオノン・バルジも同じ。昨年、一昨年は夜にマウスやホッパーを投げれば、狂ったように魚が出てきたが、今年の夜は沈黙。しかし気付いてみれば本数だけはマイレコード。小さいものを入れてタイメンは8本、アムールトラウトが3本、レノックが22本。
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84cmのタイメン。今回の状況ではまずまずの結果であった。

フライが川の中にあれば何か釣れると言われたオノン・バルジとはかなり変わってしまったが、流れと魚の行動を考えて、自分の持っている能力を引き出しから出しながら釣りをするこの状況はとても面白い。簡単なモンゴルの釣りは過去のものとなりつつあるが、フライフィッシングの楽しさは今の方があるような気さえする。

何より、自分が通した後をアムガーがルアーで探っても、一匹のタイメンも釣れなかったし、念のため魚類研究科の坂上治朗氏に釣れなかった場所に潜水して調べてもらったが、やはりタイメンは見つけられなかった。そこに居たタイメンは全部釣ったという事だ。モンゴルも通うこと7年。やっと自分の釣りに自信が持ててきた。キャンプ長のガンスフもトミンも自分の釣りを信用してくれている。長かった。ここまで来るのに。

アムガーが帰り際にこんな事を言った。「モンゴルでは60歳で人は完成すると言われている。だからそれまでに自分の身長を超えるタイメンを釣ればいい。」

そう、モンゴルでの願いは165㎝以上のタイメン。何時か必ず、それを抱きたい。