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-- FLY FISHER`S GREAT CONTRIBUTIONS

グランプリ受賞に寄せて

杉山 彰英(Akihide Sugiyama)
Grand Prix Winner of New Year Fly Show 2014

Akihide Sugiyama01

この度はニューイヤーフライショーでグランプリ受賞の栄誉を賜り、誠に光栄に存じます。

私がサーモンフライドレッシングの世界に入るきっかけとなったのは、2001年に偶然目にしたマインドアングラーNo.7の裏表紙です。1面に印刷されたsolar windの美しさは正に衝撃的でした。いつかはこの様なフライを巻きたいと思い、翌年、Pro Shop Sawadaを訪れました。まずは4/0のトラディショナルパターンをいくつか巻けるようにマテリアルを選んで頂き、その後は暇さえあればバイスに向いました。
Akihide Sugiyama02
Solar Wind
Old Limerick 9/0
by Ken Sawada

2004年からコンテストにエントリーし、2008年からはオリジナル作品でエントリーしましたが、いまいちぱっとしませんでした。悩んだ挙句、沢田賢一郎氏に意見を求めると、「生き物の必然性が無い」とのコメントを頂きました。

当たり前の事ですが、サーモンフライはアトランティックサーモンを釣るためのもので、飾りものではありません。綺麗な羽根をフックに取り付けただけではだめで、水中でサーモンを魅了しなければなりません。当然、生き物らしさが必要です。その後、「生き物の必然性」を学ぶために、水族館、動物園で美しい生き物を見るように努め、釣りの時にはフライの泳ぐ姿をこまめに観察し、マテリアルが水中でどのような動きをするか学びました。また、水中でフライがどの様な動きをしているかを常にイメージするようしました。そうすると釣果にも結び付き、自分にとっての理想のフライというのが少しずつですが形成されてきました。

理想のフライを巻くために、特に重視したのが水中での安定感、マテリアルの動き、そして透明感です。透明感というと抽象的ですが、水中で泳ぐワカサギやシロギスを上から見ると、骨と内臓以外は透明に見えます。これこそ生きている証です。その様な透明感を有し、水中で美しく泳ぐフォルムを持ったフライを目指しました。透明感を表現するマテリアルは各種ありますが、ゴールデンフェザントのトッピングに注目しました。トッピングは地上ではきらきらと宝石のように輝き、比較的張りのある素材ですが、水中では半透明になり、ゆらゆらと揺らぐ柔らかい素材に変わります。多くのクラシックサーモンフライのテールとウイングに使われ、サーモンフライドレッシングには欠かせない素材の一つで、最初に衝撃を受けたsolar windにも多く使われていた素材です。安定感については従来のトラディショナルパターンに比べて、テールを長くし、マテリアルの動きについてはファインファイバーのヘロンを使用しました。
 
2013年のNew year fly showでこれらの要素を含んだフライを何点か出品しましたが、色彩の組み合わせ、フォルムの詰めが甘く、納得がいく作品とはなりませんでした。その後、1年間かけて、それらのフライの欠点を考え、2点の作品をエントリーし、今回の受賞となりました。
 
サーモンフライフィッシングとサーモンフライドレッシングは一生かけて探求すべき価値を有するものです。今後も精進をしてゆきたいと思いますが、まずはこの素晴らしい世界を教えていたいただいた沢田賢一郎氏と、支えてくれた家族・友人に感謝したいと存じます。

2014年1月 杉山 彰英