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-- FLY FISHER`S GREAT CONTRIBUTIONS

サクラマス、野性の目覚め 第2章

高屋敷 富士夫(Fujio Takayashiki)

まぐれ無しで釣る

バラしが多い時期が長く続いたが、なんだかんだいっても年に2〜3本は釣り上げていた。丁度6本釣り上げた年のようにまぐれ掛かりである。「1」と「0」をさまよう段階からは脱却したと自信を持ったが、まぐれ無しで6本を越えることが大きな壁となった。当たりを沢山取る方法を試みたが、運を天に任せるようなフッキングしか期待できない事を知った。そして、確実にフッキング出来そうな方法もおぼろげながら見えてきた。しかしそれはかなりオーソドックスな方法にしか見えなかった。それでは今までの釣果を飛躍的に伸ばす方法にはなり得ない。結局これと言った方法も思いつかぬまま、翌年1996年のシーズンを迎えてしまった。

微弱なドラッグ

昨年までの反省から、結局基本に立ち返るということをテーマに釣りに臨んだ。基本とは、フックを良く研ぐ、リーダーの傷をチェックするという当たり前な事から、良く釣れる日やよい場所を捜す等々。そして最もウェイトを置いたテーマがドリフトである。

ウェットフライフィッシングやパワーウェットで「キャストしたらフライを先行させてナチュラルに送り込む。決してラインに強いテンションを掛けてはならない。」という人がいる。以前から私はこの言葉に少々懐疑的であった。解釈の違いかもしれないが、私の経験だと、フライ先行で送り込んでナチュラルな状態で流しても良い思いをした事が無かったからである。

ダウンストリームでドラッグが強く掛かった時にフッキングの確率が低下する事は解るが、反対にナチュラルに流しても余程食いが立った日でなければ反応してくれない。大切な事は、ナチュラルとドラッグの間、すなわち「微弱なドラッグ」が魚の食い気を誘う最も有効な手段であると考えていた。それを実現させるために、昨年経験した「ラインが流芯に吸い込まれるような感覚」を頼りに、フライをどのくらい「釣れる速度」で流せるかを意識したのである。

重要なのは季節毎、水量毎の最も釣りやすい流速に、最適のスピードでフライを流すことであった。

テンション

私は微弱なドラッグを保ちながら、狙ったスポットでヒットさせるドリフトを実現する為に最も意識したのが、フラットビームのテンションであった。キャストして送り込んだラインが張ると、吸い込まれた様な感触がグリップに伝わる。その時も張らず緩めずの状態を保ちながら、送り込んで行く。イメージとしては、ラインを流れに馴染ませるようにといった感じだ。この時の送り込みが足りないと、スイングの時に表層をサーっと流れてしまうし、沈ませようとフラットビームをたるませ続けると、魚が定位している層より深い所を流すことになる。

ラインを馴染ませるように送り込んだら、ターンが始まる。そこからロッドを上下に動かしてアクションを加えると、テンションが解りやすい。まだフライが流芯に近い内は、テンションが強く掛かりすぎるのでロッドをしゃくる幅を小さくし、ラインの弧が緩くなってきたら幅を広げてアクションを加える。この一連の動作の中でもアクションが短調にならないよう、イレギュラーな動きを演出する為に強弱を付ける。いくらロッドを上下に動かしてアクションを加えても、肝心のフライが単調で規則正しい動きをしていては、どこまでも魚はフライの後を付いて来るだけで、なかなかくわえてはくれない。

最後まで放っておく

ここで、「それでも当たりが無かったら、フライが流れきる前にリトリーブする」というのが定説のようになっているが、私の場合放って置くことの方が多い。ポイントによっては10秒以上そのままにしたり、しゃくったりする。大きな底石が沈んでいたり、ある程度の水深があったり、手前に流芯があるポイント、波がモコモコとしている所などはまだまだ食ってくるチャンスが十二分にある。一度追って来て戻ってしまったサクラマスは、余程のことが無い限り再度追いを見せない。自分の真下にあって、フライを追ってきた千載一遇のチャンスを逃す手はない。そこでとにかく、放っておく。

そして、スイングが終わってから良く釣れるフライの特徴は、増水時も渇水時も黒いフライが多いと言うことも参考になるかと思う。