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-- FLY FISHER`S GREAT CONTRIBUTIONS

サクラマス、野性の目覚め 第2章

高屋敷 富士夫(Fujio Takayashiki)

ポイント

釣り上げる数を増やす手段として、ポイントを数多く釣る方法がある。この対極にあるのが一ヶ所で粘る方法である。いつか必ずやって来るベストタイムを期待してか、中々その場を離れられない。私はこの方法を性格的にかなり苦手としているが、時に大きな威力を発揮する時がある。それは、渕尻や瀬頭に待機していた魚達が、何かのきっかけ(時間?、潮回り?)によってムービングを始め、その時にフライがタイミング良く通過すればヒットする確率は非常に高くなるからである。

象徴的なことといえば、ある期間、ヒットする時間帯が一定になることだ。ただし、去年のこの日は何時にヒットしたからといっても、この傾向は毎年変動するし、1日1回の時もあれば2回の時もある。だからサクラマスを釣る人の多くは、一見あまり関係の無さそうな潮回りや風向きを気にしたりする。川中どこでもヒットするわけではなく、この傾向が現れるポイントは大体特定されるので、釣り仲間やルアーマンの情報を頼りに統計を取ってみる事を薦める。あくまでホラ話は見抜くと言う前提でだが。

ポイントを移動しながら釣る

ではポイントを移動しながら釣る方法についてだが、実はこの方法を採用するようになって魚と出会える数が増えた。勿論前述のような粘りの釣りも時と場合で使い分けるのだが、良くても2ラウンドも流して反応がなければ場所を移動した。では何故釣れるようになったのかというと、それはポイントを細分化したこと、多くの人と反対側から狙ってみたことが大きな要因と考える。これまでも、開拓がてら数多くのポイントを釣ってきたが、この2点を意識して釣ることによって反応する魚が増えた。

まずポイントを細分化すると言うことだが、大体の釣り人は瀬頭から瀬尻までを完全に流しきらない内に止めてしまうことがほとんどである。自覚はないかもしれないが、最初の数投と反応のなかった後の最後の数投は丁寧に流しきらない内に止めてしまうことが多い。ヒットポイントがここしかないと大勢の人が知っているポイントほど、その前後の離れたポイントでヒットする。渓流釣りで、ここから入ってくださいとばかりに駐車場や道がついている所から下流に魚影が濃いのとどこか似ている。状況によって膝下程の水深でヒットする事はなんら珍しいことではないので、人が釣っているところを良く観察して釣り残しを見つけるのもポイント探しの一つと考えたい。

ルアーマンしか釣らないポイントを狙う

また、フライで釣りやすい所ばかり釣っていてはヒット数は伸ばせない。とかく釣り下って遠投出来る場所こそがフライのテリトリーとばかりにポイント選びをしている節がある。最初はそれでも構わないが、何時までたっても手数が増えない。

ではどのようなポイントを釣るかと言うと、一言で言えばルアーマンしか釣らないポイントである。更に、ルアーマンさえ入らないポイントも狙う。すでにこの川は開拓し尽くされていると言われていたとしても、極端な話両手で一抱え程のポイントの中には、見向きもされていない場所が多く残っており、何も悲観する必要はない。こうしたポイントはヘッドの長さだけで釣ったり、ロールキャスト、スペイアップ等で障害物を如何にかわすかが勝負の分かれ目となる。釣りに行く度に、ほんの10分でもそうしたポイントを探るだけで、いつか当たるだろうという算段である。

人の反対側から釣る

そしてもう一つ、人の反対側から釣るということだが、いわゆるフライのテリトリーの反対側、つまりバックのとれない崖側やブッシュ側と思えばよい。そうしたポイントはロッドを思いきり振ることが出来ない。流芯が手前に来ている事がほとんどで、キャストした後にラインを送り込むようにして流すことも多い。ポイントまでの距離が短いから核心部分まで十分にフライを沈める事が出来ない。

こういうポイントを攻める場合の釣り方だが、まずラインを重いものに替える事とフライを重いものに替えることを考える。ラインを重いものに替える方法は、そもそもフライを流す層を変える時に使う手段であり、ヘッドの長さも流れの太さと相対関係にあり、近距離のポイントをカバーするにはシンキングラインでは使い勝手が悪い。またこうした流芯が目の前にあるようなポイントでは、ラインを重くするとドラッグが強くかかるだけである。ではシンクティップというラインがあるが、これは有効である。しかし、釣り場を頻繁に移動してその都度ラインを交換するのが面倒なので、出来れば簡単な方法を採用したい。