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-- FLY FISHER`S GREAT CONTRIBUTIONS

サクラマス、野性の目覚め 第2章

高屋敷 富士夫(Fujio Takayashiki)

カッパーチューブ

そこで、フライを交換するだけで簡単にフライを沈めることが出来る、カッパーチューブが脚光を浴びることになる。カッパーチューブは前回書いたように投げにくい反面、一気に沈めることが出来る。確かにコツがいるが、近距離を投げる分にはそう難しくはない。ある程度の水量さえあればこれらの小ポイントを釣るのに丁度都合が良かった。また遠浅から攻められ続けてスレている魚を違った方法で狙おうと思った時も、カッパーチューブは都合が良かった。

しかし、この方法にも問題があった。あらかじめ予想していたことだが、このやり方でヒットするのはスイングが終わりかける時か、自分の真下であることが多い。要するにバレるリスクを伴う点であり、やっている事は依然として変わっていないということになりかねない。そこで最後はフライそのものに行き着くことになる。

スクィッドフライ

私が今まで使用してきたフライの中で、スクイッドフライの使い方に自信を持てないでいた。他のフライで釣れていたので出番がなかったということもある。バラしが続く期間を経て、小さなポイントに目を向ける様になり、どうしたら追ってきた魚をがっちりフッキングさせる事が出来るのかを考えていたら、自然とスクイッドフライに目を向けるようになった。

そして実際に使ってみたところ、かなりの成果を収めることが出来た。期待以上と言って良い。勿論バレる魚も多いことは多いのだが、自分のほぼ真下でフッキングするにも拘わらず、キャッチする魚は増えて行く。去年までの、早いスイングでバラシを連続していたのを思えば、奇跡のような確率で釣り上げることが出来た。その証拠と言ったら良いのか分からないが、ヘアーウイング系のフライで(ウォディントンでもカッパーチューブでも)釣れた魚は口の脇に掛かるのに対し、スクイッドフライを使用して釣れた魚のほとんどが、吸い込む様にフライをくわえていた点も見逃せないと思う。また、確信を持つにはまだまだ実績が少な過ぎるのだが、フリーフックメソッドを採用することで、バラシも少なくなった気がする。フッキングの瞬間だけでなくファイト中に外れる魚が減ったのも、ファイティングの上達と共に、フリーフックの恩恵があったからこそと思い始めるようになった。

次なる目標

カッパ—チューブを使って、誰もやらないポイントで一定以上の成果を収めることが出来た。一年に釣り上げた魚の数も飛躍的に向上した。一般的なポイントでも、ミスが減りキャスティング技術が向上するにつれて、条件の良い日は狙い通りに釣り上げることが出来るようになった。しかし、達成できていない事が一つだけあった。そう、ビック・ワンである。これだけ数が出るようになればいつかは釣れるだろうと言う甘い期待もあったし、事実65センチ近辺はたまには釣れる。実際こうした立派な大物を釣り上げれば格別な喜びがあるのも事実だが、どうしても私の心を満たしてはくれない。そう、それは「超」の付く大物、夢の70センチオーバーを釣って初めて満たされるからである。

私には70センチクラスと思える魚とは、過去に3度出会った。そのいずれも阿仁川であり、いずれも釣り上げることが出来なかった。大物は逃がした本人にしかその悔しさは分からない。1日100匹の小魚を釣っても記憶は消え失せるが、もう会えないと思わせる位の大物をバラシた絶望感は、嫌でも思い出す。

多くのサクラマスを相手に分かったことは、このような超大型サイズはそうそう出ないと言う事だった。しかし私には、70センチオーバーという越えなければならない目標がある。この目標をクリアしても、また次の手に負えない魚が現れるに違いないが。

希望に満ち溢れた釣り、サクラマスフィッシング。彼女はまたきっとやって来る。私は釣りをしながら四六時中呟く。「待ってろよ」と。

-------つづく------