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TRAVELLER

野生のモンゴル

沢田賢一郎

プロローグ

大草原、馬に乗った遊牧民、チンギスハーン、そしてタイメン。モンゴルと聞くと先ずこんなイメージが浮かんでくる。そのモンゴルへ、トロフィークラブの常連である平野秀輔氏が冒険旅行を企てた。こんなチャンスは滅多にない。私も早速、同行させて戴くことになった。
飛行場の外は粉雪が舞っていた。とても9月とは思えない。

平野氏の立てたプランだから、もちろんゴビ砂漠の探検ではない。必ず水のある所に向かうはずだ。そのモンゴルの水が、我々フライマンにとってどれほどの価値があるか。今回の旅の目的は、それを見極めることであった。

成田を発ったのは2004年9月29日。日本には台風が接近中、大陸には低気圧が発生していたせいで、凡そ5時間ほどのフライト中、下界は厚い雲に閉ざされたまま何も見えない。上空から川の様子が見えるのではないかと楽しみにしていたが、それは叶わなかった。

モンゴルの首都ウランバートルに着く直前、雲の切れ間からやっと下界が見えた。その瞬間、私は我が目を疑った。草原が白く覆われている。まさか雪?

本当に雪だった。幾ら月末と言っても未だ9月だと言うのに雪が降っていた。目の錯覚ではない証拠に、空港から一歩表に出た途端、間違いなく氷点下と判る風が頬を刺した。もうそれだけで何の説明を聞かなくても、我々が立っているのは未知の世界と言うことが判った。

川は我々の居るウランバートルよりずっと北で、海抜も高い。果たして無事に釣りが出来るだろうか。少々不安になってきた。

翌朝、暗いうちに起き飛行場へ向かった。雪は激しくないが未だ降り続いていて、辺り一面真っ白である。飛行場で数時間待ったが、我々のヘリは視界不良を理由に結局飛ばずじまい。天気には勝てず、我々は1日足止めを食らうこととなった。