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TRAVELLER

野生のモンゴル

沢田賢一郎

10月7日

朝7時に目が覚めた。外は昨夜に増して冷え込んでいた。私が焚き火を始めると炊事係が起きてきて、暖かいスープを作ってくれた。身体がようやく暖まったところで釣りの支度を始めようと思ったら、ウェダーも靴も石のように凍り付いていた。何とか履けるようになるまで10分以上も焚き火に当てなければならなかった。
リールもマウスフライも、すっかり凍り付いてしまった。

8時、やっと支度を終えると、私は林を抜けて上流に向かった。道には真新しい狼の足跡が幾つもあった。ユリュー川は300mばかり上流で大きな支流が合わさっていて、そこに壊れた橋が架かっていた。

合流点の上流は深く、見るからに良さそうなプールとなっていた。私はラインをタイプ3に、フライをオレンジフレームのロングテールに換え、その流れ込みから釣り下ることにした。ところが投げたラインを手繰ると、手の平に氷が溜まる。5回投げないうちにロッドのガイドは全て氷で塞がれ、ラインが動かなくなってしまった。
朝は一面に霜が降りていた。狼の足跡を踏みながら上流へ向かう。

気温は一体何度だろう。水温は5度だったから、私はロッドを水に漬け一度は氷を溶かしたのだが、次は更に酷く凍り付いてしまった。明け方は氷点下10度以下になっていたようだ。ところが朝日が当たると様相は一変した。氷が取れただけでなく、30分もすると暑くなってきた。何という変わりようだろう。

橋桁の付近まで釣り下って来たとき、ようやく当たりがあった。魚は走らず、真下に潜ろうとする。案の定、小型のタイメンだった。
壊れた橋にかけて魅力的なプールがあった。