モンゴルフィッシング -- 2年間を終えて
平野 秀輔
初めてオノン川へ
ファーストタイメンはチンギスハーンプール。マウスフライで釣ったのも初めてだった。ガンスフはフライでもナイトフィッシングができることに驚いていた。
2004年9月、再びロッドを担いでウランバートルに降り立った。このときの状況は沢田さんの「野生のモンゴル」に詳しく記述されている通りである。しかしながらこの場を借りて少々の補足をさせていただく。
まず、オノンキャンプに着くとガイドのアムガー(通称:鉄人)が開口一番「フライでタイメンを狙って釣るのは無理だ。たまたま釣れることはあるけれど。」という。モンゴルでは何度も聞かされたフレーズだがいい気分はしない。しかしその一時間後、沢田さんと二人でキャスティングを始めると彼の表情が一変した。何故フライフィッシングなのに対岸まで届くのだと。そして二つ目のプールで沢田さんが2匹のタイメンを釣り上げると彼ははしゃぎまわった。さらに夕食後、真っ暗になったチンギスハーンプールでマウスフライを使ってタイメンを釣り上げて見せると、もう彼はフライフィッシングに対して疑いを持たなくなった。
57?のアムールトラウト。来年こそは70cmオーバーを釣りたいものだ。
次にアムガーも釣り人だから、ガイドをする際に当然のように自分のロッドを持って来ているし、すぐに釣りをしたがる。しかしガイドが釣りをしてしまっては何にもならないのだと、トラガを通じて言い聞かせた。最初、彼は戸惑ったような顔をしていたが、ようやくその真意が伝わった様で最終日にはロッドを持って来なくなった。
さらに外国からフィッシャーマンが多く来ると必ず村の現地人とトラブルが起きる。そこで外国から来たフィッシャーマンの世話をした方が、村全体が経済的に潤うような方策を取ることの必要性をガンスフに説くことになった。沢田さんにおかれては5時間もの長時間に渡ってガンスフと討論していただき、最終的にはガンスフも「自分たちの将来まで考えて釣りの話をしてくれたのは二人が初めてだ」といって感激していた。
オノンと並び、美しいユル川。白樺林の中を潜り抜け目指すポイントに向かう。キャンプさえあれば日本人には最高の川かもしれない。
2004年秋、オノン川で釣ったタイメンは4日間で二人合わせて15匹(うち沢田さんが10匹!)。最大は沢田さんが釣った88cm。しかしながら「今回釣れたタイメンはまだ青年達ばかりだ」とガンスフは言う。よって当然にメーターオーバーを釣る手段を一冬中考えることになった。
またオノン川には当初想定していなかった好ターゲットがいた。アムールトラウトである。学術的にはレノックとの区別がはっきりとはしていないらしいが、アングラーとしてみればレノックとの違いは歴然である。まずレノックより全体的にプロポーションが良く、口の形も体の模様も違う。そして何よりそのファイトはレノックより強烈である。今後オノン川を訪れるフライマンにとって、70cmオーバーのアムールトラウトはメーターオーバータイメン以上の存在となるかもしれない。
2004年秋はオノンから一旦ウランバートルに戻り、更に車でウランバートルの北へ位置するユル川へも行ってみた。そこは渓流相の素晴らしい川で魚も沢山いた。オーナーズミーティングで披露した未公開DVDを見た方には十分すぎるほどその素晴らしさが伝わったと思う。しかし川に向かう途中の悪路には閉口したし、キャンプがないのでテント生活を余儀なくされた。沢田さんも「野生のモンゴル」で書いておられるが、夜中に狼の鳴き声をテントの布一枚向こうに聞くのは、何とも緊張を強いられる環境であった。