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TRAVELLER

モンゴルへのお誘い

平野秀輔

スペックルドセッジ

スペントバジャーに全く反応しない魚なんているのだろうかと、何か腑に落ちないままフライをスペックルドセッジ#12に替えて対岸の弛みに投げると、今度は1投目から30cmオーバーのレノックが何のためらいもなくあっさりとフライを飲み込んだ。
ヘルレン川用のフライボックス。スペントバジャー、ワイルドキャナリー、スペックルドセッジ、マドラーミノー、#6〜#12のウェット一式。つまり日本の渓流と全く同じ。秋はこれにフェスタやアクアマリン、グリーンワスプなどを加えると良さそうだ。

それから弛みと流芯脇ではレノックが、流芯ではハリウスの入れ食いとなり、レノックにいたっては次々とフライを飲み込んでしまった。フライが小さいから飲まれるのかとも思い、スペックルドセッジを#8にサイズアップして投げるが飲み込み方は同じである。コクチマスと言われるように口が他のトラウトに比べて小さいのに。

レノックはポイントも習性もブラウントラウトに似ている。そしてハリウスはやはりグレイリングだ。するとモンゴルの川はヨーロッパの川と同じようなフライフィッシングが出来るということになる。ヨーロッパとの違いはインフラの整備が全く言って不十分なことと、日本から近いこと、そして何より魚の数が圧倒的に多く、そのすべてが天然ということである。
こんな環境の中で入れ食いが続く。大都市に住むフライマンにとっては夢のような時間。

面白いことにフライを投げる度に餌がたくさん落ちてきたと思ったのか、徐々に足元近くのポイントでもレノックが入れ食いとなって、しまいには2匹同時にスペックルドセッジを追ってきた。早くフライに到達した方がフッキングし、残りの1匹はまた餌が流れてこないかと辺りをきょろきょろしている。すばやくリリースして同じ所に投げると残りの1匹もすぐにフッキングした。たまにはこんな釣りもいいかと、思わず笑ってしまった。

これだけ活性が高ければどんなフライでも食うだろうと、再びフライをスペントバジャーの#14やワイルドキャナリー#10に替えて流す。しかしやはり全く反応しない。それではとマドラーミノーの#8を投げると今度は反応するが食い込まない。なんだか訳が分からなくなって再度スペックルドセッジに戻すとまた堰を切ったかのように入れ食いが始まる。6月の強烈な太陽が照りつける日中の釣りだけしかしていないので断定は出来ないが、どうもモンゴルのトラウトフィッシングではフライサイズではなくパターンが重要なようだ。ただし秋になるとメイフライやトンボも飛ぶようになると現地の人は言うのでスピナーが効かないとは言い切れない。また秋にはかなりミノーに対して興味を示すようなので、ライトタックル(#7程度)によるパワーウェットでストリーマーを泳がせるという方法も有効かと思われる。

この日は残念ながら日程の都合上日帰りとなっていたので、さまざまなパターンやパワーウェットを試す時間がなかったが、ウェットではシルバーマーチブラウン#8とピーコッククィーン#6によく反応した。