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フリーフック・メソッド

フリーフックのセッティング法

1 プラスティックチューブの端を平らに切り落とす。
2 使用フックのサイズに合わせ、シリコンチューブ(ミニまたはマグナム)を3〜5ミリほどの長さを切り取ってショートカバーチューブを作る。この際、切り口を直角に滑らかに切る。
3 チューブにフライのボディを巻くときは、後端を殆ど余さずに巻き上げる。

4 フックをセットするときは、ショートカバーチューブにリーダーを通してからフックを結び、アイの部分をそのチューブに差し込む。
5 フライは水圧によってフックと一体となって泳ぐが、魚がくわえた瞬間、フックから離れる。

6 ショートカバーチューブが水中でフックを安定させる。
予めショートカバーチューブを何本かのフックにセットしておく。こうするとフックの交換が素早くできて便利。フックサイズに合ったチューブを用意する事が大切。


新作のチューブフライにST2をフリーフックでセットする。
Pheasant Squilla(上)とJungle Squilla(下)。Squillaとは蝦蛄(しゃこ)の意。

チューブフライのフックセッティング

チューブフライの愛用者にとって厄介なことと言えば、ほとんどの人がフックのセット方法を挙げるに違いない。切れたり外れてしまったシリコンラバーチューブをもう一度チューブのボディに付ける作業は、何度行っても好きになれない類の仕事だからだ。それが厭な人はプラスティック・チューブの後端に直接フックを差し込んでセットを完了する。ただしこの方法には、これから説明するように幾つかの問題点があるし、第一、アルミやカッパーのチューブには使えない。

こうした煩わしさやデメリットを一挙に解決する新しい方法が発見された。正にコロンブスの卵といった方法だが、今から5年ほど前、名前は定かでないがスウェーデンのあるアングラーが思いついた方法だと言う。私はその方法を同じスウェーデン人のギリー、ヨナス(写真右)から教えてもらい、昨年(2000年)から試して見たのだが、その効果には目を見張るものがあった。これを発見したアングラーには大変に感謝している。
Jonas Hammerstdt
Photo by S. Hirano

何処が優れたアイデアなのかを検証する前に、先ず今までの問題点を洗い出して見よう。

チューブフライとトレブルフック

最初にチューブフライが使われたのは今から凡そ50年ほど前のことだった。初めはプラスティックのチューブにイタチの尻尾の毛を縛り付けただけと言う簡素なものだったが、まことに良く釣れた。当時は裸のチューブの後ろに小さなトレブルフックを直接差し込んでいたが、問題が起こるどころか正に画期的であった。最初に使われたチューブフライはサイズの小さいローウォーター用のフライだったからである。魚が軽くつまんだだけでも、小さなフライは口の中にすっぽり入るし、短いチューブはフックの働きに対し、大きな妨げとはならなかったからである。

ところがチューブフライが広まるに釣れ、そのサイズも素材も多様化してきた。ここから問題が生じてくることとなった。

大型のチューブフライ

大きなサイズのプラスティックチューブは、その後端にフックを直接セットすると、フライ全体がもの凄く長いシャンクのトレブルフックに巻いたようになる。フライとフックは一体化するため、キャスティング中や水中でのトラブルが殆ど無くなる。その代わり魚がフライをくわえると、我々はそのロングシャンク・トレブルフックでファイトしなければならない。シャンクが長くなればなるほど、魚の動きにフックが付いていけず、振動で外れたり肉切れが多発する。これを避けるため、大型のチューブの後端にシリコンゴムや柔らかいプラスティックを被せ、そこにフックを差し込むことを考えた。その結果アルミやカッパーもチューブの素材として仲間入りした。

シリコンゴムは柔らかく、フッキングした後でも簡単に折れ曲がるため、魚の動きに対するフックの追随性は、完全では無いものの格段に向上した。しかしゴムが切れたり、チューブから外れたり、フックが外れたりするトラブルが増え、それを元に戻すのは、冒頭に述べたように、かなり煩わしい作業である。また、フライのボディの後端をゴムのために開けて置かねばならず、それがフライの見栄えをかなり損なっていた。

新しいフリーフック・メソッド

魚がくわえる迄はフックとフライが一体となっており、魚がくわえた瞬間からフックだけが独立する。これは長い間の夢だったが、ここに紹介する新しいアイデアによってほぼ実現できたと言っても差し支えないだろう。

初めて試した今年の夏、私は2匹の今までにない針掛かりのサーモンを釣った。一匹は鼻面、もう一匹は下顎の外側から針が刺さっていた。こんなフッキング状態のサーモンを釣ったのは初めてであった。サーモンが今年初めてこんな針掛かりをしたとは考えにくい。おそらく今までにも何匹となくそうした針掛かりをしたサーモンが居たに違いない。しかしそれらは全てあっさりとフックが外れてしまい、私がその光景を見ることが無かっただけだと思う。極めつけは、7月に釣った12.5kgの強烈なファイターであった。その強いサーモンを引きずり上げたのはST2の8番であった。普通ならフックが伸びるか肉切れを起こしてしまう。裸のフックが持つ追随性の良さを改めて再確認した。

キャスティング中のトラブルに関しては、一日中投げ続けて平均2回ほどであったから、殆ど無いと言っても良いだろう。